音楽が好きです。聴くのも歌うのも。20代、30代の頃は音楽関係の会社にいたので、私にとって「音楽」とは、聴くもの、歌うもの以外にも、生活の糧でもありました。そんなわけで、私の人生の真ん中にはいつも音楽があります。
そんな私を上石津で待っていたのは、今まで体験したこともなかった「音楽の新しい魅力」でした。
上石津には、町民の町民による町民のための、さまざまな部活動があります。時地区だけでも、バレーボール、ヨガ、二胡、大正琴、英会話、そば打ち、民舞、民謡、手芸、お茶、お花。私が知るだけでもこんなに。
前回の「小町さん」の回でもちょっと書きましたが、移住したてのヒマヒマなある日、小町さんが誘ってくれました。「コーラス部入らない?」。
その名も「コーラスとき」。結成38年の、時地区のコーラス部です。ほとんどのメンバーが、長い歴史を支えてきた大ベテランのみなさんです。
カラオケ好きの私としては、家の近くにカラオケ屋さんなどなく、歌うことに枯渇していた矢先。これは渡りに舟!さっそく見学に伺いました。
恐るおそるおじゃますると、みなさん、とても和気あいあいとしています。いい感じ。そこへG先生とピアノのK先生が到着し、一気に緊張感が高まります。
音大で教鞭をとられているG先生はとても気さくですが、レッスンはガチ。準備運動、発声練習、着席と立席での課題曲の練習。ソプラノ、メゾ、アルトの3声で、高度なアレンジの課題曲をくり返し練習します。音程の正確さはもちろん、合唱独特の発声や発音、歌詞の表現まで追求します。うわ〜レベルたか〜!想定外の事態です。しかも、3ヶ月後には大きな合唱祭での発表が控えているそうな。ついていけるのか。
一瞬後ずさりした私ですが、みなさんがとても温かかった。歴史の長いチームは、必ずしも新メンバーはウェルカムではないと思うのですが、私の参加を快く歓迎してくださいました。私の少し前に次々入部した通称「ヤングチーム」もすっかりなじんでいます。ああ上石津よ、あなたはどこまでやさしいのでしょう。
それからの3ヶ月は、学生の運動部さながらに青春そのものでした。練習日はみなさんに必死についていき、時間さえあれば車やお風呂で自主トレ。楽譜を覚え、発声法を身につけるところからスタートの私。長い時間をかけてみなさんが積み上げてきたものを台無しにしてはいけないという一心でした。
そして合唱祭当日。地元・日本昭和音楽村の水嶺湖ホールは、大入り満員です。県内外の強豪チームがそろう中、おそろいの衣装でビシッと決めた「コーラスとき」は、まぶしいライトを浴びながら、完全に一つになれたのです。井上陽水さんの「少年時代」を歌いながら、鳥肌が立った瞬間は今でも忘れられません。
目標に向かってみんなで努力し、力を合わせて成果を出す。まるでアスリートやプロのミュージシャンのような体験をさせてもらえるなんて。
上石津での新しい生活が教えてくれた、新しい音楽の魅力。
音楽ってやっぱりすばらしい。